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「にゃぁーにゃぁー」
すると寝ていたと思っていた少年が目をパチリと開けた。そして、しっしっと手を振り私を追い払う。
あら、私に向かっていい度胸じゃない。
じーっとお互いにらみ合っていると、少年は「はー」とため息をつくと、仕方なくベンチから起き上がり、私をマジマジとみた。
「お前も、一人か?」
「にゃぁー」
「そっか…ってかお前俺に似てねぇか?」
私も茶色毛で泥水がちょっとついている。
「えぇ、似てるわね」と答えるが、少年には「にゃぁー」しか聞こえていない。
それでも少年は「そっか、一緒だな」とはにかんだ。
あれれ、もしかしてちょっといいやつ?
そう思いながら一歩づつ警戒しながら近付いていく。足元にちょこんと座るとひょいっと私を持ち上げ膝に乗せてくれたので大人しく座ってみた。
「お前、暖かいな…」
少年は私の背を何度も撫でる。
私は気持ちよくなってきて目を閉じた。しばらくすると、ポタポタっと私の背に水が落ちてきた。
まだ雨は止んでいないのだろうか?と眠たい目を開けると小雨だった。
そうだ、ここ屋根あるじゃん。じゃぁ、この水は…と落ちた方へ目を向けると、少年が声を殺して泣いていた。
そんな風に泣いてもすっきりしないのに。
声に出して泣けよ少年。
ペロリと手の甲を舐めると少年は私という存在を思い出す。ペロペロと今度は涙を舐めてやると少年の涙がますます溢れ出し、「うう…」とやっと声に出して泣き始めた。
「なんで…なんで…俺じゃないんだ…」
何か後悔しているのだろう。何度も何度もその言葉を呪文のように繰り返す。
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