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ふと目を開け前を見てみると男性が立っていた。ただ、こっちを、少年を見ている。
少年は気付いていない。
ここは私が人肌脱いであげるわっと一声、二声と少年が気付くまで鳴き続けた。すると少年も私が鳴き続けるので何かあるのかと顔を上げた。
「!…せん…せい」
先生と言われた男性がこちらにゆっくりと近付いてくる。そして、目の前に来るとピタリと足を止め、バシッと少年の頭を叩いた。
「いっ!いてぇじゃねぇか!」
「アホ、当たり前だ。痛くしてるんだ」
そういうともう一度叩いた。
容赦ないわねこの人。
「青葉浩基…こんなとこにいるぐらいなら俺のとこにこいといつも言ってるだろうが」
「誰が行くか!暴力教師」
「お前にいわれたくないね泣き虫不良少年」
「やまぶきー!」
青葉少年が真っ赤になって怒って叫ぶが、矢吹先生はニヤニヤと笑っている。
ダメだこいつら…。
「にゃー」
呆れて鳴いていると矢吹先生が「おや?」と私に気付く。
「美人さんだね。首輪がないから野良猫さんかい?」
「にゃー」
「そうか。じゃぁ俺んとこの子になるか?」
そうねぇ…ここに居ても仕方ないからそうしようかしら。うん、そうしよう。
「にゃー」
「そうか、そうか。と言うことで、浩基君。その美人さんを俺の家まで運んでくれ」
「はぁ?何で俺が!」
「だって懐いてるだろ、その美人さん」
矢吹先生と青葉少年が私を見る。仕方ない、のってあげよう。
私は青葉少年の手に頬をスリスリし、可愛く鳴く。
「にゃー」
「…仕方ねぇな、連れてってやるよ」
青葉少年は文句を言いながらも私を優しく抱っこし歩き始めた。
外は小雨。この調子だとすぐ止むわね。
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