こどもひゃくとおばんの車

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                  * 「じゃ、またお願いします」  笹本は受付にいる薬剤師に頭を下げ玄関を出た。  きょうは注文なしか。  大振りの手帳にチェックを入れて閉じると営業車に戻った。次の病院を回ったらきょうの午前中の仕事は終了だった。  笹本は医薬品のルート配送をしていた。担当の病院を回り、注文を聞いてそれを配達する。簡単そうでそうでもなかった。新製品の売り込みはしないがドクターの機嫌を損ねてはいけないし、看護師たちや薬剤師たちにも気に入られるようにふるまわねばならない。必然的にストレスが溜まってくる。  笹本は運転席に座り大きく伸びをした後、車を発進させた。
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