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序章:都市伝説と少女
何故人は、気分が沈むと海へと足を運んでしまうのだろうか。
そんなことを、俺は砂浜の手前にある階段に腰掛けながら考えていた。
だからと言って、別に俺は落ち込んでいたからここに来たわけではない。ただ、なんとなく気になったのだ。何故ドラマや映画の登場人物は、落ち込むとこうして海を眺めていたのかが。
だけど、実際にこうして眺めていると、その理由がなんとなく分かる気がした。
どこまでも続きそうな水平線からは、人ひとりの悩みなんてちっぽけだと思わされるし、青く澄んだ海は、悩みや不安を全て洗い流してくれそうな魔力がある。
もしかしたら人は、海に救いを求めているのかもしれないと、そんな結論に至った。
そんなときだった。ジャリッ、と小石を踏んづけたような音が耳についた。そこで意識を現実へと戻すと、斜め後ろに人の気配を感じた。
「あなたは、都市伝説を信じる?」
弱々しい声。だが、声のイメージから受けた印象は、普段は明るい子だったんじゃないかと思わせる音色だった。
「…………」
俺は少しだけ顔を横に向けて、横目でその人物を見やる。
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