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肩までは掛からない程度の長さの黒髪ショートに少しキツい猫目が特徴の少女だ。その少女は俺と同じ学校の制服を身に纏っていることから、同い年くらいだろうと推測できる。
黒真珠のような瞳は、こちらに見向きもせず、ずっと海の方へと向いている。
その姿は、妙に現実味がなかった。
俺が答えないでいると、桃色の唇を開いた。
「あたしは、信じてるんだ」
「都市伝説を?」
「うん」
返してくれたことが嬉しかったのか、今まで海の方へと向いていた顔をこちらに向けて、笑みを浮かべた。
「あなたは、信じる?」
首を傾げて問い掛けてくる少女から視線を逸らすように、今度は俺が海の方へと視線を投げた。
なんて答えたものかと、考えて。
「信じない……けど」
言いながらどこか引っ掛かるものを感じて、答えを曖昧にすると少女は「けど?」とおうむ返しにした。
「君を見てると、そうでもないような気がする」
「うん?」
言ったことがイマイチ伝わっていなかったのか、微妙な顔をした。
俺はその様子に呆れるように笑い。
「普通、知らない人にいきなりあんな声の掛け方しないだろ?」
「そ、それは……そうだったかも」
少女は否定しようとして、途中で言いたいことが分かったのか、諦めたようにガクリと肩を落とす。すると彼女は、様子を伺うような目をこちらに向けてきた。
「もしかして、あたしのこと変質者か何かだと思ってたりする?」
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