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「かなりね」
「ひ、ひどかー!」
即答すると少女は大袈裟に反応した。
「変質者でもないなら、もう都市伝説を信じるしかないな。それくらい君の行動には現実味がない」
「そこまで言わなくっても良いじゃん! ちょっと魔が差しただけだし!」
そう言うとぷいっと顔を背けられてしまった。どうやら怒ってしまったらしい。
だからと言って宥めようという気にもならず、俺は再び海の景色へと意識を沈めた。
それからどれくらい経っただろうか。
あれ以降、少女は一言も喋らなかった。俺もまた、一言も喋らなかった。
ただひたすら、もうすぐで夏を感じさせる柔らかい風の音とそれに揺られる波の音に意識を預けていた。
そうする中でふと、風に紛れて「またね」という言葉が微かに聞こえた気がして、意識を現実に戻した。
そこにはもう、さっきの少女の姿はなかった。
辺りを見回しても少女の姿はなく、それどころか人ひとり居なかった。
俺は頭を掻いて、帰ろうかとその場を後にした。
帰り道、何故か先程の少女事が頭から離れなかった。
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