第一章:異変は突然やってくる

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「あのな半田。確かに夏休みまで三週間を切った上に、期末テストも終わったから勘違いするのも分かるけどな、よく考えてみろよ」 「もうすぐ夏休みでハッピーだろ?」 「違うな。だいたい、俺がそんな前向きなことを言うと思うか?」 「だよな。雪人がそんな前向きだったら、俺は偽者じゃないかと疑うね」 「お前なぁ……」  軽く否定してくれる期待も虚しく、半田はあっさりと肯定した。  若干不満に思ったが、めんどくさかったので口には出さなかった。 「それでなんなんだ? 勘違いって」 「ん? ああ……」  いつの間にか眠そうに視線を窓の外へと放り投げていた俺は、気のない返事をして半田と向き直る。 「ああ……ってお前な」 「悪かったって」  呆れるような視線をかわすように短く謝罪して、さっきまでまとまっていたはずの考えを思い出す。 「俺が言いたかったのは、いくら夏休みが迫っていようが、学校なのは変わりないってこと。授業やらなんやらはあるんだから、夏休みが近いからってテンションは上がらないんだよ」 「なるほど、それは雪人らしいな」  そう言って半田はにこりと笑う。そんな彼を眩しそうに目を細めて見たところでHR開始を告げるチャイムが鳴った。 「それじゃあな」 「ああ」  短く返事をすると、半田は自分の席へと戻っていった。     
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