第二章:笑顔の裏側

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 俺は家に着くと、走ってもいないのに何故か少し乱れている呼吸を整えて、中の人に気づかれないようにゆっくりと玄関のドアを開けた。  いつも通り靴を脱いで、廊下に上がったところで、話し声のようなものが耳に入ってきた。  その瞬間、ピタリと足の動きを止めた。  リビングの方から声が漏れている。どうやら、俺が懸念していた最悪の事態になっているようだ。  俺はそろりと忍び足でドアの前に近づくと、聞き耳を立てた。 『ほらこれ、ユキの小学生の頃の写真よ』 『わぁ、かわいいですね! 今のセンパイとは似ても似つかない……あ、ごめんなさい』 『良いのよ。あの子ひねくれてるし、目付きも悪いから……どこかで育て方を間違えたのかしら』  ドアの向こうでの、散々な言いように頬をひくつかせている間にも、会話は続いた。 『昔は優しくて良い子……だったかしら? 思い返すとそうでもなかった気がするわね』 『そんな! センパイ、素直じゃないだけで結構優しい……ですよね?』 「何で疑問系なんだよ……」  俺はツッコミを入れながら、リビングのドアを開けた。  リビングのソファには首を傾げた状態で固まる楓乃と、その隣には数日振りに見た母、相川玲子(あいかわれいこ)の姿があった。     
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