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俺はそれに溜め息を吐くと、誤解を解くことを早々に諦めて、二人とは反対のソファに座った。
「それで、今回はどれくらい家に居るんだ?」
「楓乃ちゃん、ユキが冷たいわ! お母さん泣いちゃいそう」
よよよといった感じで、玲子は口元を手で覆った。
「あ、あはは……あたしちょっとお手洗いに……」
楓乃は困ったように苦笑いすると、そう言って廊下へと逃げていった。
廊下の向こうからガチャリというトイレのドアらしき音が響くと、途端にリビングには沈黙が降りる。
俺は何となく気まずくなり、視線をどこに置こうかと落ち着かないでいると、玲子が沈黙を破った。
「少ししたら、また出るね」
「そっか」
素っ気ないような玲子の言葉に俺も素っ気なく返す。
どうということはない、いつも通りのやり取り。俺はそう思っていたのだが、玲子は違ったのか、優しく笑った。
「最近会えてなかったから、ちょっと様子を見に今日は帰ってきたの。だから、その……元気そうで安心した」
「なに母親みたいなこと言ってんだ?」
「母親だからよ」
玲子は胸を張ってそう言いきった。
そこで玲子が「あっ」と声をあげると、何かを思い出したかのように手を合わせた。
「そうそう、お父さんからユキに伝言があるのよ」
「父さんが?」
意外だと思った。
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