第二章:笑顔の裏側

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 普段、家に居てもあまり喋らないし、向こうから干渉してくることも滅多にないため、自分にはあまり興味無いのではないのかと思っていたのだ。  そんな父からの伝言。何だろうかと玲子の言葉を待つ。 「『納豆を、毎日ちゃんと食べろ』って伝えてくれって」 「な、納豆?」  全く意図の分からない伝言に、頭の上にはてなを浮かべていると、玲子はくすりと笑った。 「あの人……本当に不器用よね。心配なら、もっと別の言葉を掛けてあげれば良いのに」  ため息混じりに言った母の言葉で、ようやくどういうことか理解できた。  それを自分の中で言葉にする前に、玲子が答えた。 「お父さん、何だかんだでユキのことが心配なのね。本当に昔から変わってない……」 「そっか」  俺が短くそう返すと、再び沈黙が降りる。  だが、不思議と先程のように気まずいということはなく、寧ろ心地良いような気がした。  そうしてからどれくらい経っただろうか。楓乃がまだお手洗いから帰ってきてないところを見ると、それほど時間は経っていないこの時、玲子は「よし」と言いながら立ち上がった。俺もそれにつられて立ち上がる。 「それじゃあ、お母さんそろそろ出るね。ちゃんと暖かくして寝るんだよ」 「ああ、分かったよ」     
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