第三章:記憶の重み

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第三章:記憶の重み

「海?」  思いがけないことを言われたというように、ポカンとした顔をこちらに向けて、楓乃はそう言った。  休日が明けてから二日経ったこの日、俺は帰りに楓乃を捕まえてファミレスに来ていた。  今日は終業式。皆一様に夏休みムードでワッショイしている中を、俺は淡白に過ごした。健全な学生ならば、俺もその中に混ざって上半身裸にくらいなっていた方が自然なのだろうが、どうしても馬鹿馬鹿しいと思えてしまう。  だから俺は、HR終了と同時に教室を飛び出した。だがその勢いは、校門前に来たところで止めることになる。楓乃に言っておくことがあるのを思い出したのだ。  それから校門前で道行く生徒達の妙にキラキラとしたオーラを一身に浴びながら待ち、今に至るわけだ。  楓乃はドリンクバーのオレンジジュースを一口飲んで疑問を口にする。 「それって、センパイと二人っきりってこと?」  それに俺はアイスコーヒーが入ったコップに口をつけようとした動作を止めて、先に答えを返した。 「いんや、半田も居るから三人だな」 「そういうことかぁ……センパイが海なんて言うから、一体どうしたのかと思ったけど、半田センパイが絡んでるなら納得だね」 「お前な……」     
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