第三章:記憶の重み

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「俺達が遊んでる間、お前は炎天下をゾンビのように徘徊するのか……せっかくの夏休みなのに可哀想に」 「なっ!? 行きたくないとは言ってないでしょ!」  焦ったように言う楓乃が面白く、俺は更に畳み掛けていく。 「でも、やけに渋ってるじゃないか? 良いんだぞ、無理しなくて」 「だ、だから……」  だんだんと力が抜けるように楓乃の声は小さくなっていき、それと同時に、顔を俯かせて胸の前に持ち上げられていたコップをゆっくりと降ろしていく。すると、桃色の唇が小さく動いた。 「行く……から」  本気で泣きそうな声に何故だか、とてつもない罪悪感に刈られた。  いつもだったら「絶対行くからね!?」ぐらい言うかと予想していたのに、こんなことになるなんて思いもしなかった。  楓乃はコップを両手でギュッと握り締めて。 「だから、そんなこと言わないでよ……」  そう言って耐えきれないように目元を腕で隠してしまった。  俺は流石に焦ると、周りの刺すような視線を感じた。  ゆっくりと辺りを見回すと、近くの席の男性客がこちらを見ながら「泣かせた泣かせた」と口の動きでしか分からないが、そう言っているような気がした。  俺はその視線から逃れるように楓乃へと視線を戻して、身振り手振りを使って宥めていると、急に身体が小刻みに震えだした。     
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