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「俺がこんなことをするのは、お前だけだぜ」
照れたように俺が鼻の下を人差し指で擦る。
「なにそれ、すっごい嫌だ。あたしにも優しくしてよ!」
「厳しいのは、優しさの裏返し」
「絶対そんなこと思ってない! 普通にムカついたからやったんだ!」
「うん」
真顔でそう答えると「ばりむかぁ!」と意味の分からないことを言って口を尖らせた。
だが忘れてはいけない。元の原因が、楓乃の悪ふざけだったということを。
俺は、そっぽを向いてあからさまな機嫌悪いですよオーラを放つ楓乃を無視して「それで、海はどうすんの?」と気楽な感じで話し掛けたが。
「…………」
ツーンとしていて、なかなか話してくれない。しょうがないと息を吐いて、俺は手でスピーカーを作ると。
「なにその態度? ばりむか!」
「やめてよそれ!?」
似非博多弁で言うと、恥ずかしそうに顔を真っ赤にして楓乃は勢いよく立ち上がると、俺の頭をポカポカと殴ってきた。
これから無視されたら博多弁を使おうかと思い始めた所で、またも店員に良い笑顔で注意され、楓乃はしょんぼりと席に着いた。
俺はその様子に苦笑いしながら、横に立ててあったメニューを開いて見せた。
「取り敢えず何か頼めよ。奢ってやるから」
「……うん」
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