第三章:記憶の重み

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◇  迎えた夏休み二日目。外はこれでもかって言うくらいの日本晴れだった。  今朝のニュースでは、絶好の行楽日和ですとアナウンサーがハキハキとした声でそんなことを言っていたのをよく覚えている。  だが、そんな言葉とは裏腹に、俺の気分はとてもげんなりしていた。  数週間前まではじめじめとした暑さだったのが、今ではからっとした暑さに変わり、気温もかなり上がったように思える。  毎年の事とはいえ、やはりこの時期は苦手だ。こんな時はキンキンに冷えた部屋で過ごすのが一番なのだが、今日はそういうわけにはいかなかった。 「おい雪人、見てみろよ。海だぜ海! 砂めっちゃサラサラしてるし、テンション上がるな!」  手で庇を作って言うのは半田だ。部活で鍛えられた身体の下にはトランクスタイプの水着を着用している。  というか、砂がサラサラしていても別にテンションは上がらない。 「センパイセンパイ。向こう岸までどっちが早く泳げるか競争しよ! 負けた方はかき氷奢りで!」  両手を胸の前で拳を作りながら言う楓乃の格好は、上は胸だけを隠すようにあるフリフリのついたタイプで、下はショートパンツのようなものだ。     
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