第三章:記憶の重み

9/32
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/133ページ
「まさか、こうなるとはな」 「あはは、そうだね」  レンタルしたビーチパラソルの下で、俺と楓乃は苦笑いしながら呟いた。  その目線の先には、顔をタオルで隠した状態でぐったりと寝転がる半田と、その横で体育座りしてかき氷を口に放り込む楓乃が居た。  焼きそばを賭けた半田との水泳対決は、意外な結果で終わった。  一回目に勝負した楓乃との対決は俺が辛くも勝利したものの、何故か奢らされ、続いて二回戦目に行われた半田との水泳対決。  序盤は予想通り俺の前を泳いでいた半田だが、俺が岸に辿り着くと、何故かそこに半田の姿はなかった。おかしいなと思った俺は振り返ると、後方で足がつったらしき半田がノロノロと歩いているところだったのだ。 「う、うぅ……市民プールとかで何でわざわざ皆をプールから上げてまで準備体操をやらせるのか疑問だったけど、さっき痛感したわ……。体操大事」 「長年の疑問の答えが分かって良かったじゃないか。俺は焼きそばをタダで食えたし、お前のへばってる姿も見れてお腹一杯だ」 「くっ……雪人、少ししたら今度はお好み焼きを賭けて勝負だからな」 「はいはい、そういうことはまず起き上がれるようになってから言おうな」     
/133ページ

最初のコメントを投稿しよう!