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本来なら、彼ら彼女らのように心の底から楽しむ権利を俺達も持っているはずなのだ。今しか出来ない事をして、思い出を作って、大人になったとき、ふと思い出して口元がついほころんでしまうような、そんな思い出にしたい。
けれど、その思い出を楓乃は共有することが出来ない。笑いあった友人達に忘れられ、自分一人で抱え込む悲しく虚しい記憶となる。
そんなの辛すぎる。一番辛いのは忘れることじゃない。忘れられることなのだ。
楓乃に起きていることが一体どういうものなのかまだ分からない。けど、絶対に何とかする。俺だけが覚えていられるのはきっと、楓乃を助けるためだから。だからいつかこの現象を大人になったとき、笑い話にできるようにと、そう思う。
俺はふと思い出したようにスマホの画面を見ると、楓乃がゴミを捨てに行ってから二十分もの時間が経過していた。
流石にゴミを捨てに行くだけにしては遅すぎる。
「半田、ちょっと荷物見ててくれ。トイレ行ってくる」
「ん? ああ……」
今だにタオルを顔に被せたままの半田が、くぐもった声で返事をしたのを聞き届けると、俺はその場を離れた。
最初は海の家からその周辺、次にトイレへと順番に探し回ってみるものの楓乃を見つけられなかった。
もう一度海の家の前へと戻り、今度は全体を見渡してみる。
「ん?」
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