第三章:記憶の重み

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 最初はいきなり都市伝説を信じるか聞かれて、正直胡散臭い奴だと思っていたが、今思えば納得できなくもない。  友達にも親にも相談しても意味はなく、かと言って一人で抱えるには大きすぎる問題。心細くて、色々と磨り減った精神状態の時にタイミング良く都市伝説の噂で有名な場所で海を眺める少年が居たら、もしかしたらと思うのも当然かもしれない。なんなら、あの時の彼女からすれば、俺の方が胡散臭かっただろう。 「前に聞いたときは結局誤魔化された感じだったけど、センパイはなんであそこに居たの?」 「んー、本当に何かを思ってあの場にいた訳じゃないんだよな。落ち込んだりとか、考え事があったわけでもない……でも、強いて言えば、頭の中を一度空っぽにしたかったのかな」 「空っぽに?」 「そ。だから意味なんてないんだ」  人は考える生き物だ。考えたくなくても考えてしまう。  そんな時、ドラマのワンシーンである海を眺める主人公達を見た俺は、あの砂浜に足を運んだのだ。  だから何故? と言われても、納得させるだけの答えを俺は持ち合わせていないのだ。  だが、もしそこに意味を見出だすと言うならば。 「でも、もしかしたら俺は、楓乃の助けになるためにあそこに行ったのかもな。俺だけは楓乃のこと覚えてられるし」     
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