第三章:記憶の重み

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 ◇  楓乃と戻ると、俺達は今日という日をふんだんに遊び倒した。  既に復活していた半田と早速第二回水泳対決を行い、泣く泣くお好み焼きを奢ったところで、今度は半田の友達とうっかり鉢合わせてしまうも、そのまま三対三のビーチボール対決を白熱させた。  それらを終えて、帰る頃には既に日が傾いていた。橙色に彩られた空の下を歩く俺の後ろからは、当然のように付いてくる楓乃の姿。そのすっかり日常となったその光景に疑問を口にした。 「なぁ、当然のように付いてくるけど、お前いつ家に帰るんだよ?」 「ふぇ?」  俺の質問に楓乃は素っ頓狂な声を上げながら首を傾げた。  まるで、そんなことに疑問を持つ俺がおかしいと錯覚してしまう程に楓乃は分からないと言った表情を浮かべている。 「いや、何か家に帰っても誰も居なかったとか、待っても帰ってこないとか言って俺の家にずっと居るけど、本当か?」 「本当だよ。じゃなかったらとっくに自分の家に帰ってるもん」 「そうか」 「そうだよ」  楓乃の口調は不気味な程に淡々としていた。  まるでそれが――帰れないことが普通であるかのように、全く気にしている素振りがない。     
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