第二章:笑顔の裏側

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 だが、すぐに何かにおかしいことに気づいてストップを掛ける。 「いや、ちょっと待てよ。普通逆だろ。何で俺の方に何も無いこと前提で話を進めてんだよ」 「たまにはそういう趣向もありかと思ってね」 「なんだよそりゃ」  俺は腕を枕にして机に突っ伏した。  それに篠崎が涼しげな声を掛ける。 「でも、あまり目の前の考え方だけに囚われない方が良いと思うよ」 「どういう意味だ?」 「勘違いしてるかもしれないってことだよ。その子が抱える問題は、ひょっとしたらもっと途方もない事なのかもしれないし、案外簡単に解決できることかもしれない。どちらにしても、現象の一つ一つを目に見えたまま捉えるのはやめた方がいい」 「そう言われてもなぁ」  それが率直な感想だった。  ただでさえ何が何だか分からない現象を、目に見えたまま捉えるなと言われても無理と言う話だ。  他の答えを出すには、その答えを出すための知識が必要なのだ。それがない俺に、別の解を出すことはできない。  その心情を悟ってか、篠崎はフッと笑うと。 「出来る限りで良いんだよ。ただ、目に見えることが全てじゃないってことを言いたかっただけ」 「そう、か…」  あまり納得せずに呟いて、机に突っ伏したまま篠崎を見やる。     
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