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そう言うと、楓乃は驚いたように目を丸くしてふっ、と表情を和らげた。
「センパイもそんな事言う時あるんだね」
言われて、途端に恥ずかしくなり、楓乃から目を逸らす。
「……忘れてくれ」
「やーだよ」
楓乃はイタズラっぽく笑うと、沈黙が降りるが、不思議と気まずくはなかった。
俺はふとどんな顔をしているのか気になって楓乃を見ると、穏やかな顔で海を眺めていた。
決して小さくない問題を抱えているとは思えない程に、その顔は穏やかだった。
「楓乃……」
気が付けば、楓乃の名前を呼んでいた。
「なに?」
特に喋ることを考えてなかったことに、俺は少しの間を開けて。
「夏休み……沢山遊ぼうな」
言ってから、自分は何を言っているのだろうかと思ったが、楓乃は少し驚いただけで、すぐに笑みを作った。
「うん!」
そう明るく返事をしながら立ち上がると、砂を払うようにパンパンとお尻を叩いてから腰に手を当てた。
「じゃあ、そろそろ戻ろっか。半田センパイも待ってるだろうし」
晴れやかな笑顔でこちらに手を伸ばす。
「そうだな」
伸ばされた手を取って立ち上がりながら思う。
絶対に、何とかする。
そんな頼りなくも、力強い言葉を胸に刻んだ。
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