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ーー別にいいけど、君だけ痛みを感じないのは不公平じゃないか?
ーー幽霊だからって痛くないとも限らないよ。
それで、一緒に寝てくれるの?
僕は項垂れつつ、床にカーペットを敷いて、二人分の枕を並べた。
電気を消して布団を被り寝転んだ所で、またしてもスマホから着信音。
ーーうでまくら。してほしい。です、
なんともわがままな幽霊だ。
僕は素直に隣の枕へ向けて腕を伸ばし、ついでに見えない彼女を抱き締める様に空いた腕を虚空に回した。
霊感皆無な僕は本当にそこに彼女がいるのか確信が持てなかったし、わざわざ写メを撮る手間をかけられる程の余裕も既になかった。
ただ愛猫が僕の隣を見つめて、甘える様に何もない空間に身を転がして喉を鳴らしていたから、そこに彼女はいるのだと思った。
温もりも何もない、僕にとってはただひたすらに虚無でしかない空間に、彼女の存在を錯覚しながら、薄れゆく意識の中で満足気に微笑む彼女の幻覚を夢うつつに垣間見た。
アラームの音に覚醒する。
今日は仕事だ。
覚醒しきらない頭で支度を始めるかと体を起こした時、手に違和感を覚えた。
視線をやれば、彼女を抱き締めていた筈の手に、指に、長い髪の毛が幾本か絡まりついていた。
明らかに自分のものではない、女物の髪の毛。
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