ひかりにおちる

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ーーそれにしても、なんか、君さ 死んでからの方がわがまま聞いてくれるようになったよね。 彼女の言葉に、息が止まった。 脊髄にズドンと重たい鉛が落とされた様な錯覚に陥る。 一瞬、歩みも止まったが、直ぐになんてことない風を取り繕って呼吸と動きを再開する。 彼女の言葉にショックを受けている自分を、僕は受け入れたくなかった。 それは、彼女の死に対してどこかで負い目を感じている自分を認めたくなかったからだ。 僕は、彼女の死から逃げている。 そんな事実を飲み込める程僕は人間が出来ていない。 ーー甘やかしすぎたかな。 ーーえー ーーもうわがまま聞いてやらない。 ーー……なんか、怒ってる? ーー怒ってないよ。ただ疲れただけ。夜勤明けに人混みに揉まれるために遠出してきて。 ーーごめんね。 ーー……謝らなくていいよ。 僕の暗い気持ちを察したのか、途端に彼女も気弱な対応になる。 それまでと打って変わってお互い気不味い空気を滞空させながら、電車に揺られる。 僕は彼女のスマホをポケットに仕舞いながら、水族館のあの暗い通路を思い出していた。遮蔽物で光の届かない、真っ暗な路を。早く明るい場所へ行ければ良いのに、 光は遠い、遥かに。
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