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お互い欠けた部分を補う為に、必要だったと言う。
「父が頑固者なのは、陽一も知っているだろう? 会社を立て直す為とは言え、大人しく乗っ取らせてはくれなかったんだ」
「…じゃあ、お前と利皇は何をしたんだ?」
「上の役員達を説得したんだ。企業機密に関わることだから、あんまり詳しくは言えないけど…」
しかしあの利皇の性格を考えれば、何となく想像がついてしまう。
口が上手い上に、S&Mという会社で働いていたのだ。あらゆる所から情報を集め、そしてコネも使って、うるさい上の役員達を黙らせたのだろう。
「他にも株主とか、発言力のある人達をこちらの味方につけた。そして後継者問題の会議が行われた時、クーデターを起こしたんだ」
「…羽月ではなく、利皇を後継者にする為にか」
「そう。ボクを推薦したのは父一人だけだった。いくら父でも、自分以外の全員の意見を無視することはできない。そうして利皇が全てを奪ったんだ」
「お前はそれで良かったのか?」
「もちろん」
羽月は心から穏やかな笑みを浮かべた。
「利皇は約束してくれた。欲しかった地位を手に入れる為に協力してくれるなら、ボクに自由を与えてくれるって」
羽月は陽一と額を合わせ、ゆっくり眼を閉じた。
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