208人が本棚に入れています
本棚に追加
4
「ちなみにお前の位置はどうなるんだ?」
「まあ父の子供であるからね。名前ばかりの役職はあるけど、何かするワケじゃない。ボクはとりあえず、今の仕事で満足しているし」
「そっか…」
ちょっと惜しい気持ちはあるが、羽月が出した結論なのだ。
羽月の会社のことに対しては口を出さないとはじめに言っていた。だから彼の好きなようにさせておきたい。
「プロジェクトの方は代理の役はそのまま続けるって。一応この会社、父の会社の関連ってことになっているからね」
利皇が顔を出しても、大丈夫なのか。
ほっとし、陽一は軽く息を吐いた。その後、真っ直ぐに羽月を見つめた。
「なぁ、羽月。お前の心の整理がついてからで良いから、その…」
「うん」
「…お前の紅茶、飲ませてくれないか?」
「えっ…?」
眼を丸くした羽月に、陽一は微笑みかけた。
「久し振りに飲んでみたいんだ。お前の紅茶。ああもちろん、毒入りじゃない普通の紅茶が良い」
おどけながら言う陽一の様子を見て、羽月は戸惑いを隠せない。
「陽一、でも…」
「お前の言いたいことは分かってる」
羽月の不安を、ぴしゃりと止めた。
最初のコメントを投稿しよう!