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「だからこそ、飲みたいんだ。最後に飲んだのがあの紅茶という記憶は寂し過ぎる。羽月だってもう親父さんの呪縛から解き放たれたんだ。…新しい一歩を、踏み出しても良いんじゃないか?」 「陽一…」  羽月は俯き、しばらく考え込んだ。  その間、陽一は黙って待っていた。  羽月には考える時間が必要なのだ。ようやく暗く重い鎖から解き放たれた今だからこそ、考えられることを―。 「…うん、分かった。新しいブレンドティーができたら、陽一に一番に飲んでほしい」 「ああ、楽しみにしている」 「うん」  顔を上げた羽月。ふんわりと笑った表情には不安や迷いなどなく、どこかすっきりしたようだった。 「陽一、今日も泊まっていくんでしょう?」 「まあ、な」  利皇の件を聞く為もあったが、羽月に会いたい気持ちの方が強かった。  二人とも仕事が忙しく、なかなか会えない日々を過ごしていたから。 「嬉しい。大好きだよ、陽一」 「ああ、オレも好きだ。羽月」  お互いじゃれるように、キスをした。 「んっ…」  ベッドの中で眼を覚ました陽一は、隣に羽月がいないことに気付いた。  サイドテーブルに置かれた時計を見ると、まだ朝の六時。 「朝食の準備でもしてんのかな?」  泊まりに来ると、いつも羽月がご飯を作ってくれた。  だから再び布団の中に潜り込む。  しかし頭は冴えていた。二人の今後を考えると、ため息が出る。 「どうしたもんかな…」     
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