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コップに牛乳を注ぐ羽月を見て、ふと思い出したことがあった。
「あっ、そう言えばちょっと気になっていたんだけど」
「何?」
「あの寝室、他の人が来たことあった?」
「ないよ。陽一がはじめての人」
「…良かった」
陽一は心から安堵した。
今はもう取り去ったが、あの陽一の写真だらけの部屋を見られたくはなかった。
「来客は応接室で全部済ませているし」
「会社の会議とかは?」
「このフロアの一つ下に、会議室があるからそこで。でも滅多にやらないしね」
「…それでよく会社が持っているな」
「まあそれはそれで」
にっこり笑うが、それであの利益が出るのだから、個人的な能力は各々高いのだろう。
「あっ、そ」
「じゃあ食べようか」
「うん。いただきます」
「いただきます」
羽月の作る料理は洋食が多かった。昔から料理を作るのが上手で、味も良くなっていた。
「羽月は料理上手いよな」
「まあ一時は本当に喫茶店のマスター目指してたから」
「ああ…」
陽一があまり深く考えずに言った言葉だが、羽月は大切に思っていたんだろう。
「でも今はこうして、陽一だけに食べてもらうのも良いかなって思ったんだ」
「ふぅん」
素っ気無い返事に聞こえるだろうが、恥ずかしいのだからしょうがない。
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