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看板もワインレッドに会社のロゴマークがピンクで描かれるというド派手ぶりで、売り物は地味なのに、そのギャップが良いらしい。
店は三階建てで、上からフラワー製品・フルーツ製品・そして食料&飲料の製品を販売していた。
若い女性客が殺到しているのは、オープンして間もないのもあるが、利皇が今現在、店の前でテレビの取材をされているというのもあった。
「アイツ、やっぱり目立ちがり屋だったんだな」
「うん…。注目されるの、好きみたい」
モデル顔負けの美貌を持つ利皇に、若い女性達は文字通り群がっている。
おかげで様子を見に来た陽一と羽月は、途中で歩みを止め、遠くから見つめることしかできなかった。
「…まあ売り上げも良いし、評判も良いみたいだからな」
「そうだね。頑張ったかいがあったよ」
そう言って二人は踵を返し、その場から去った。
―関わらない方が良いと、二人は心の中で同時に思った。
「ああ…ウチの会社の大人しく、慎ましいイメージが…!」
「ボクも商品の扱いばかり頭にあって、建物のことは関知していなかったのがマズかったね」
羽月の家のリビングで、陽一は頭を抱え込んだ。
「工場の人達に何て言おう? アレが今の東京の流行としか言うしかないよな?」
「だね」
絶望で目の前が真っ暗になる。
羽月はダイニングからトレーを持って戻って来た。
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