一年後 /店が完成して…

2/5
前へ
/115ページ
次へ
 看板もワインレッドに会社のロゴマークがピンクで描かれるというド派手ぶりで、売り物は地味なのに、そのギャップが良いらしい。  店は三階建てで、上からフラワー製品・フルーツ製品・そして食料&飲料の製品を販売していた。  若い女性客が殺到しているのは、オープンして間もないのもあるが、利皇が今現在、店の前でテレビの取材をされているというのもあった。 「アイツ、やっぱり目立ちがり屋だったんだな」 「うん…。注目されるの、好きみたい」  モデル顔負けの美貌を持つ利皇に、若い女性達は文字通り群がっている。  おかげで様子を見に来た陽一と羽月は、途中で歩みを止め、遠くから見つめることしかできなかった。 「…まあ売り上げも良いし、評判も良いみたいだからな」 「そうだね。頑張ったかいがあったよ」  そう言って二人は踵を返し、その場から去った。  ―関わらない方が良いと、二人は心の中で同時に思った。 「ああ…ウチの会社の大人しく、慎ましいイメージが…!」 「ボクも商品の扱いばかり頭にあって、建物のことは関知していなかったのがマズかったね」  羽月の家のリビングで、陽一は頭を抱え込んだ。 「工場の人達に何て言おう? アレが今の東京の流行としか言うしかないよな?」 「だね」  絶望で目の前が真っ暗になる。  羽月はダイニングからトレーを持って戻って来た。     
/115ページ

最初のコメントを投稿しよう!

208人が本棚に入れています
本棚に追加