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甘い二人
『だね。俺の方もこれからフランスに行かなきゃだから。しばらくは羽月くんと二人でゆっくりしなよ』
「言われなくてもそうする」
『陽一くんも言うようになったねぇ。そうじゃなくちゃ、おもしろくないけどね』
「言ってろ。じゃあな」
『うん、また連絡する』
忌々しく電話を切ると、不安げな表情を浮かべる羽月と視線が合った。
「何か利皇と陽一、仲良くなったよね? この一年で」
「…そうか?」
確かに会話することは多い。
利皇は性格に難があるものの、付き合いやすくはあった。気軽に話せるのも、羽月以外では彼ぐらいかもしれない。
「まあ会話内容は仕事と羽月のことぐらいだけどな」
「ボクのこと? …ボクのいない間に、何を話しているの?」
少し拗ねたように、羽月が抱きついてきた。
「お前の留学時代のこととか、な。別に大したことじゃないよ」
「それならボクに聞けば良いのに…」
「他の人から見たお前のことを知りたかったんだよ」
柔らかな髪の中に指を絡ませ、陽一は笑った。
「でもあんまり利皇と仲良くしちゃダメだよ。あの人、陽一に気があるみたいだし」
「ははっ…」
強く否定できないのが苦しい。
「あの、ね。陽一、話は変わるんだけどさ」
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