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「そりゃあわたしも前は東京に勤めていましたから」  苦笑する水野を見て、陽一は思い出した。  水野は昔、東京に住んでいて、不動産屋に勤めていた。かなり優秀な成績を出していたが、父親が亡くなると同時に会社を辞め、ここへ戻って来たのだった。 「そっそうでしたね…」 「ええ。向こうの知り合いに調査を依頼してみたところ、怪しい部分が出るわ出るわで、どうしようか困っているんですよ」  水野の言う怪しい部分とは、まず会社の場所。東京都内の高級ビルの最上階にあるものの、そこを訪れる人はほとんどいない。  ビルには警備員が何人も配置されており、会社を訪れる約束を交わさないうちは中にも入れてもらえない。  そして会社の従業員も十名と公表されているが、特定できずにいるらしい。 「会社の内情は怪しいものですが、仕事に関して言えば安全です。黒い所などありませんでした」 「でも…正直言って、ウチの商品は彼らにとってそんなに魅力的に見えるんですかね?」  陽一と水野は互いに見つめ合い、数秒後、同時に深く息を吐いた。 「確かにこんな田舎で作っているにしては、良い商品だと胸を張れるでしょう。しかし…ある意味、どこにでもあると言えばそれまでですし」     
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