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「珍しい限定品を売っているつもりもないですしねぇ」
陽一の言う通り、ここで作っているのは東京に行けば見つかる物ばかり。
しかし原材料がこの土地で出来ている、という強みはあるが、それがはたして店で売り出して販売実績に繋がるのかは怪しい。
駅やデパートでは、物珍しさで売れるというのが大きい。
それを一つの店として売り出したところで、出る数字は低そうだと、二人は口に出さずに心で思った。
「正直言いまして、この契約は向こうのダメージの方が明らかに大きいです。なのに出してきたんですから、何らかの裏があるのではと思いまして…」
「そうですね。でもウチみたいな会社に詐欺を仕掛けて、意味なんてあるんですか?」
「それも考えました。しかしウチみたいな中小会社からは、何も取れないと思うんですけどね」
水野も歯切れ悪く答える。
「確かに売れ行きは上がっていますが、そんなに大きな利益は出ていませんし、商品自体も盗もうが潰そうが向こうに得することなんてないと思います。知名度だってそこそこと言ったところですし、ライバルなんてものも存在しませんしね」
小さく細々と運営してきたのだ。どこぞの企業に眼を付けられるいわれもない。
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