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「う~ん。なら断った方が良いんじゃないですか? 水野さん。後に経営不振になって、こっちにダメージが来ても困りますし」
「そうですね。ただ万が一向こうが本気ならば、これほど良いお話はないんですが…」
「それはまあ…そうですが」
東京に一店舗でも店があれば、工場のみんなのやる気も違うだろう。もちろん成功すれば、喜ばしいに決まっている。
「でもリスクを考え、向こうの会社の本心も考えると、やっぱり…ってなりません?」
「陽一さんも向こうの会社の本心が気になりますか」
「ええ。まあお店の話は素直に嬉しいですし、経営の方は何とかなるかもしれない。けれど相手側の本心が見えないことには、動き辛いですね。それこそ万が一詐欺だとすれば、泣くに泣けないですし…」
「そのことですが…」
水野は声を潜め、真剣な表情を浮かべた。
「実は向こうの会社の方から、陽一さんに一度来社してほしいとの申し出があるんですよ」
「オレに? 何でまた」
確かにこの会社の営業は陽一が担当している。だがこの場合、社長である父を指名するのが普通だ。これほどまでに大きな話なら一従業員よりも、会社の代表と話がしたいはず。
「分かりません。向こうからは陽一さんを指名されただけですから。ご都合が良い日を教えてくだされば、いつでも向こうの会社の担当者が会ってくれるそうです」
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