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「分かった」
くすっと笑い、ビンを手にした羽月は陽一に口移しで水を飲ませた。
「…ドリンクの種類も多いんだよね?」
「ああ。でもほとんど利皇が持ってった。気に入ったのかな?」
「そうかも。利皇はああ見えて、こういうのにうるさい人だから。彼が気に入ったのなら、スゴイことだと思うよ」
確かにそういう眼はありそうだ。…性格を抜かせば、良い友達になっただろうに。
思わず遠い眼になるも、羽月がビンを見て複雑そうな顔をしていることに気付く。
「どうかしたか? 何か問題でも?」
「あっ、うん…。…紅茶はないんだよね?」
「紅茶か? …ああ、ないな。紅茶の葉を栽培していないし」
「そう、だよね」
歯切れ悪く、サイドテーブルにビンを置く羽月の様子はどこかおかしい。
「何だ? 紅茶が飲みたかった?」
「…いいや。そうじゃないんだけど…」
羽月は口ごもった後、しばらくして何かを決心したように語り出した。
「昔、まだ母さんが生きていた頃のことを思い出してね」
「…ああ」
「よく二人でオリジナルのブレンドティーを作っていただろう? 陽一にもよく飲ませていたっけ」
「そう…だったな」
過去のことを話すのは、まだ少し気まずい雰囲気があった。
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