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陽一を殺しはしなかったものの、失ってしまった事実は大きく、そして苦しいものだった。
複雑な表情を浮かべる陽一の額にキスをして、羽月は微笑んだ。
「さっ、仕事の話はここまでにしよう。せっかく二人っきりでいるんだし、もっと楽しく過ごそう」
そう言って陽一をベッドに押し倒した。
「ちょっ、待てよ! またするのか?」
「うん。陽一のおかげで具合も良くなったし、二人っきりでいられるのも久し振りだからね」
陽一の手を握り、頬に摺り寄せながら羽月はふんわりと笑う。
「―ダメ?」
「だっダメじゃないけど…」
「じゃあ良いよね」
羽月は満足げに笑い、陽一の首筋に顔を埋めた。
陽一は釈然としないまま、羽月の背に腕を回した。
「羽月くん特製のブレンドティーねぇ。俺は良いと思うよ?」
工場を視察に来た利皇は、あっさりと頷いた。
「彼は元々器用だしね。東京進出の記念に新商品を出すというのも悪くはない」
「あっ、そう」
工場の人達の歓迎を受けた後、陽一は利皇を工場見学という理由で外に連れ出した。
利皇はさすがに羽月が推薦しただけはあり、演技は素晴らしいものだった。工場の人達はすっかり騙され、利皇を喜んで受け入れた。
その様子を見て、陽一は心が凄く痛んだ。
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