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 遠回しだが、励まそうとしてくれる利皇の気持ちが伝わったからだ。 「―ありがとな、利皇」 「んっ。羽月くんと別れたら、いつでも俺のところにおいで」 「その一言が余計なんだっ!」  利皇との会話があって数日後、陽一はテレビのニュースで知った。  羽月の父親が本当に引退し、その後継者に利皇がなったことを。 「ぶっー!」  早朝、モーニングコーヒーを飲んでいた陽一はテレビを見て思いっきりふき出した。 「げほげほっ。なっ何だってぇえ!」  テレビの中の羽月の父親は苦い顔をしており、対して利皇は満面の笑みを浮かべていた。 「アイツっ…隠してやがったな!」  不安になる陽一を見て、さぞ心の中で笑っていたに違いない。  陽一はあの時、礼を言ったことを激しく後悔した。  ―その日の工場は休みの日だったが、陽一の家では電話が鳴り響き、訪問客も多かった。  理由は利皇のことだ。  数日前に会った人物が、まさかこんな大物だったなんて、陽一は知っていたのかと問い詰められていた。  だが知らなかったものは知らなかったと言うしかない。  とりあえずプロジェクトには影響ないだろうと言うと、ひとまず落ち着いた。  だが陽一が落ち着かなかったのは言うまでもないこと。     
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