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 そして週末。新幹線に乗って数時間後、陽一は五年ぶりに東京に訪れた。 「うわっ…。すっかり変わってる」  街の変貌ぶりに、思わず息を飲む。 「東京は変わりやすいですからね。さっ、行きましょう」 「あっ、はい」  水野に案内され、駅を出る。そこからタクシーに乗り込んだ。 「先程の説明は覚えていらっしゃいますね?」 「…ええ、まあ」  新幹線の中は人がまばらで、内緒話ができた。  水野が言うには東京駅ですでに、護衛役の人間はついているらしい。  これからS&Mへ向かうが、あちらは陽一一人を指名してきた。なので水野は入れない。ビルの前には喫茶店があるので、そこで待機をする。護衛役の人間はビルを囲むように、待機するらしい。  そして二時間以上連絡が取れない場合は、強行手段に出るという話だった。 「まあ何もないとは思いますが、念の為だと思ってください」 「分かっていますよ」  ここまで水野が心配するのは、ただ単に相手が怪しいからだけではない。  五年前のことも、関係しているのだ。  あの事件のことで、陽一は心に酷い傷を負った。  もう二度とそんな傷がつかないようにと、父と同じぐらいの心配性の過保護になってしまったのだ。     
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