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「お腹が痛くて休んだの」
「お帰りなさい。恵美子ちゃん久しぶりだね」
男性の声がした。
(母親の彼氏だ!)
咄嗟の事で何て言ったら良いのか解らない。玄関に立ち尽くしていると二人が階段から降りてきた。
「恵美子!挨拶くらいしなさい!」
「こんにちはお久ぶりです」
「部活休んだの?大丈夫?」
母親の彼氏がそう言うと母親が
「食べすぎじゃない?だから太るのよ。豚になるわよ。このデブ!」
そう言って恵美子の体をマジマジとみる。母親の彼氏がその様子を見て笑い始める。
「可笑しいなー。二人とも。ハハハハハ」
恵美子は冗談じゃないと思った。泣きそうになったのを必死でこらえる。だいたい何で家の中にいるのだろう。前回会った時は母親を送りに車で来ていた時であった。恵美子の心の中は悲しみと怒りでいっぱいになる。
「それじゃあ。おじさん帰るから。またね恵美子ちゃん」
「・・・・・」
恵美子は黙って俯いていた。何故だか母親の「デブ!」と言った声が頭について離れない。
「デブ。デブ。デブ。デブ。」
その日から恵美子は徹底的にダイエットを始めた。まず給食は半分。夕ご飯はお握り一個とサラダしか食べない事に決めた。体重測定は朝一番の決まった時間に測り、きちんと記録用紙に記入していく。最初のうちは簡単に体重が落ちた。十日間で3キロ位は落ちたのだ。
(やった)テストで良い点数をとった時のように嬉しかった。
(もっと。もっと頑張ろう)
恵美子はダイエットに夢中になった。
「最近やせたんじゃない?」
剣道部の真里ちゃんが心配してくれる。
「そうかな?駄目だよ太ってる」
「太ってないよー。もしかしてダイエット?」
「ちょっとだけね」
「もともと体弱いのだから気をつけてね」
「うん。有難う」
(そうかー痩せたの解るんだー。嬉しい)
恵美子は正直に喜んだ。小さな達成感がある。でもまだまだ頑張るんだ。母親が気づいてくれるまで痩せよう。デブと言った事を後悔してもらおう。そう心に決めた。
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