67人が本棚に入れています
本棚に追加
/68ページ
bonus Track 【初めての共同作業はとっくに済んでるから。みなさん二人の門出を祝ってください!】
奏良の参加したライブは大盛況だった。
今まではカラオケ音源で奏多が歌うだけのライブだったが、ステージにはグランドピアノが設置され、それだけで、これまでと一味も二味も違ったステージになるだろうとお客の期待値も上がる。
皆の期待以上のステージを披露したわけだが、ピアノの演奏者についてはあえて説明もせず、観客の興味をあおるのが楽人の作戦だった。
今後、奏良も奏多と一緒に音楽活動をしていきたいと話すと、その線、楽人はすでに織り込み済みだという。それならば、と、次に楽人から出た指令はこれだ。
「お前ら、デュオコンでファイナルを取れ!」
冬の始まりに開催されるデュオコンクール。二人は一度、連弾中級部門でファイナルを取っている。中学一年生の頃だ。
デュオコンには小学生の頃から何度も参加しているし、ファイナルに残ったこともある。だがこのコンクールはこれまでとは規模が違った。初めて二人で挑戦した大きな国際コンクールだった。
二人で音楽活動をしていくと決めた今、コンクールに挑むのはこれで最後になるだろう。この舞台で、再びファイナルに残れば二人にとっても良い区切りになる。
奏多との活動にきっぱりシフトした奏良は連弾に集中できる。二人は今までになく仕上がっていた。
「奏多、緊張してるの」
「ううん。大丈夫」
「取れるよ」
「うん。最後だもん。取ろう」
舞台袖、司会者のアナウンス。紹介もうすぐ入場の合図がある。
「楽しもう!」
「うん。楽しもう」
ずっと、背を向け合ってきたような二人だが、演奏前には必ずこうして声をかけあっていた。
思えば、初めから心は寄り添っていたのかもしれない。
シューベルトの軽快なポロネーズ。溢れるような二人の喜びの演奏は会場を魅了した。
最初のコメントを投稿しよう!