Track 01.                         【ふと耳にした音楽に心奪われてしまう事、誰だってあるでしょう?】

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Track 01.                         【ふと耳にした音楽に心奪われてしまう事、誰だってあるでしょう?】

 一緒に下校していたクラスメイト、大島と別れてすぐ、奏良(そら)は手近な電柱に身を寄せた。そして、ポケットをまさぐりながら通行人の邪魔にならないようあたりを見回し、携帯を取り出す。  とても家まで我慢できない。どうしても、今すぐ、聞かなきゃならない曲があるのだ。  音楽好きの大島は毎日のようにマイブーム曲を勧めてくる。イヤホンをねじ込んでくることもあるくらい半ば強引に、とくに最近はインディーズの歌い手に熱をあげていた。  ついさっき、別れ際に聞かせた貰ったおススメは見過ごせない。ほんの一節聞いただけなのに、奏良(そら)には分かってしまった。体に電流が走るとはこのことだ。早く、もう一度、あの曲を全部聞かなければ――。  動画投稿サイトにアップロードされているというその曲を見つけるのに時間はかからなかった。  鼓動を押さえつけるように呼吸を整え、震える指で再生ボタンをタップしたのに、音がしない。 「あ、イヤホン……」  もう一方のポケットからイヤホンを取り出し、改めて、落ち着いて、携帯を握りしめ、奏良(そら)は目を閉じた。  出だしから奏良(そら)の肌は泡立った。ブレスイントロソングだ。声とピアノの音が、冒頭から夜が広がるように奏良(そら)の中に入り込み、曲に綴られている情景が鮮明に浮かんでくる。  ――夜の歌だ。俺……この光景、知ってる。  涙が落ちた。気付いた瞬間から奏良(そら)の目の裏には星空が広がり、気持ちの昂りを抑えられなかった。    
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