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「……奏良、今日レッスンなの?」
奏多が話を続けてくれた。もっともっと話したい。これはチャンスだ。でももう時間が無い――。
(落ち着いて話せば、別にバレない。今からでも友達に……なれるかも!)
奏良は意を決して、深呼吸を一つした。
「いや、今日は休み」
「帰り、いつもこの時間? ……ってわけでもないって、さっき聞いたよね」
「はは。帰りは色々かな。結構友達とブラブラして帰ることあるし」
「……へぇ……。お前、友達と寄り道とかしてるんだ」
「それくらいするだろ。お前しないの?」
「俺はしない。……今日は? 今日は寄り道無しの日だったの?」
「……別に――お告げ?」
「え、奏良も? マジで?」
「そんなわけあるかよ」
「ですよね……」
なんとなくノリで、奏多に合わせて“お告げ”とか言ってみたものの、奏多の一瞬パアっと明るくなった表情を見て奏良は恥ずかしくなった。
(え、なんだよ。かわいいじゃん。こいつ、やっぱ俺の事好きなんじゃないの?)
そんなわけはない。また勝手な妄想だ。
それでも勝手に頬が緩む。心臓に悪い――。こんなのもう堪えられない。
(やっぱりダメだ……)
奏多と仲良くするなんてやっぱり無理だ。こんなんじゃすぐバレてしまう。奏良は気持ちをぐっと押さえた。
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