青い珊瑚礁

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○ ○ ○ 「はぁー……やってしまった……」  ーー憧れの先輩に、みっともない姿を見せてしまった。  委員の仕事を終え、図書館を出てとぼとぼと歩く。屋根と柱の影のせいで陽の光がまだらに射す渡り廊下は、途中でいくつかの通路に分岐していく。行き交う生徒たちもけっして少なくはなく、校内は放課後の解放感にあふれていた。  先ほどの醜態を思い返して、おもいっきりへこむ。先輩にはああ言い返してみてが、自分の落ち着きのなさのせいで迷惑をかけてしまって、ほんとうに情けない。こんなことじゃ、市民を守る正義のヒーローの名が泣いてしまうぜ。  うつむきがちにそんなことを考えていた矢先、 「すいませーん、後ろ通りまーすっ!」 と、ラグビー部の一団が荷物を抱えて背後を通りすぎる。とっさに避けようとしたつもりだったのだが、物思いに耽っていたせいでワンテンポ動作が遅れてしまった。 「うわ……っ」  ペットボトルが積み上げられたカゴを抱えたラグビー部員の、そのごつい身体にどんっと盛大にはじき飛ばされ、俺は前につんのめる。本日二度目の失態に、なんとか踏ん張ろうと足を出してみたものの、その先に運悪く、落ちたペットボトルが転がっていたのだ。避けようとして体制を崩し、体がおかしなふうに傾くのを止められなかった。  今日は厄日か!? と目を瞑ったその時、前から差し出された二本の腕が俺の体をぽすんと受け止める。 「何やってんの。ーーどんくせ」 「賢人!」  顔を上げた先、賢人の冷ややかな呆れ顔が目に飛び込んでくる。
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