青い珊瑚礁

5/18
前へ
/40ページ
次へ
「ったく。こんなとこで、一人盆踊りしてんなよ。委員会は終わったのか?」 「ああ……。って、あれ? 賢人、迎えに来てくれたのか?」 「は? たまたま通りがかっただけだけど?」  不機嫌そうに言いながら、よっこらせ、と俺の身体を立たせてくれる。静かな容貌にふさわしく、賢人の胸元も涼やかだ。その手もひんやりと冷たくて、恥ずかしさで火照った顔にはほどよい気持ち良さだった。なんだかんだ言いながら突き放したりはしない賢人に嬉しくなって、ついつい俺の顔はニヤけてしまった。 「……なに?」 「いーや。賢人は、体温低いんだよなぁって思って」 「はぁ?」  あれ。しまった、またなにか機嫌を悪くさせてしまったらしい。  賢人は思いきり眉根を寄せて、じとりと俺を睨めつけた。 「ーーあんたさぁ、それ、誰と比べて言ってんの?」 「え? い、いや、別にそういうわけじゃ……」 「賢人()、って言ったよね? なに、どういうつもり? 僕を挑発してんの?」 「い、いやいやっ! なんでそうなるんだよ、そんなわけないだろっ」  だめだ。困ったぞ。なんだかわからないけど、むちゃくちゃ怒ってる。いったい何が、そんなに腹が立つ原因なんだ。 「ちょっとぉやめなよ、男子ぃ。あきらっち、涙目なってんじゃん」  軽やかな声が横から飛んできたかと思うと、ひょいと肩を引き寄せられる。氷矢のような賢人の視線にたじろぎまくっていた俺は心底から安堵の息を漏らした。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加