七色のシャッタースピード。

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「ねぇ、呉羽くん?」 「はい」 「呉羽くんは七月末の神ノ塚神社の夏祭りには行くの?」 「神社まではいきませんね。橘と商店街で食べ歩きしてます」 「呉羽くんが食べ歩き!?想像つかない!」 「うさ丸堂って和菓子屋さん知ってますか?」 「知ってるわ。あそこの苺大福だい好き!」 「夏祭りでは、店先で白玉スイーツをふるまってるんですよ」 「そうなの!?」 「僕、それが好物で毎年、楽しみにしてるんです」 「そうなのね!私は二日目の花火を見たくて、神社にしか行ったことがないのよ」 「なら、僕と橘と真逆ですね」 僕らの地元では、七月末に二日かけて夏祭りが催されるのだが、これが街をあげての密かな一大イベントになっている。神社での一日目は屋台のみなのだが、二日目は花火が打ち上がり皆んなが下駄を鳴らして集う。 東口の商店街では、花火は見えないが、一日目二日目とそれぞれが店先でその日限定の品を並べるものだから、子供からご高齢まで地元民が集まるのだ。 「湊先輩は神社の屋台でなにを食べるんですか?」 「私はね、いちご飴とかき氷」 「かき氷の味は?」 「苺よ!」 「苺づくしですね」 「あはは、それ友達にも言われるのよ!でも仕方がないじゃない?好きなんだから」 「そうですね。でもかき氷に桃のシロップがあったら、湊先輩どうします?」 「桃にするわ!」 「ははっ、やっぱり」 「でも…そっかあ…うさ丸堂…」 「まるごとキャベツの、お好み焼きもおすすめです」 「『まるごとキャベツ』!?キャベツをまるまる一つ使うの!?」 「違いますよ。まるごとキャベツは、お店の名前です」 「そうなのね!そこは知らないわ!穴場なのね!」 「穴場かはわかりませんけど、僕と橘は毎年必ず行きますよ」 すると、クンッと。指先が引っ張られる。否、湊先輩の足が止まったのだ。自然と、僕も立ち止まる。
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