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突然だが、橘優人について話そうと思う。
僕と橘の家は、実はお隣りさんの関係にある。僕が、小学校一年生になる年に橘の家族が越してきたのが付き合いの始まりだ。
同じ歳、性別、学校の子供がいるからだろう。母たちは自然と打ち解けて、いわゆる「ママ友」と、いうものになった。そこから輪は広がり、五月七日家、橘家は、家族ぐるみの付き合いをしている。
父たちは、平日の仕事帰りにわざわざ、待ち合わせをして呑みに行くほどの仲だ。
橘の五つ歳上のお姉さん、花純(かすみ)さんも、実の弟と同じ歳の僕の扱いには慣れていて、小さい頃から良くしてくれている。
けれど、僕と橘が出会った日から仲良しこよしで、今のように学校では常に一緒にいたのかと問われれば、そうではない。寧ろ逆だろう。毎日、ピアノづけで大人しい僕と、活発で明るい性格の橘。橘は常にクラスの中心的人物でいて、放課後、友達たちとサッカーだ、ドッヂボールだをして遊んでいたのに、対する僕は、ぼっちにならない程度に話をする友人がいたくらいで、学校が終われば一目散に家に帰ってピアノを弾いていた。それでも、いまだから思い返せることだけれど、そんな僕を見て橘は、よく僕に声をかけてくれていた。
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