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ふー…。と、溜め息を一つ。僕はまた、冷たい廊下へと出て職員室の扉を閉めた。文芸部__
(文芸部って、なにするんだろう)
ぼーっと、睫毛を伏せて突っ立っていると、橘の威勢のいい声が僕の耳を通過した。
「呉羽!!」
「あ、橘。ごめん、待たせ「いいから!行くぞ!購買!カツサンド無くなっちまう!」
橘に、右手首をつかまれて駆けだす。思えば、昨日から言葉を遮られてばかりだ。皆んな人の話を聞く気がないのか?あるいは人生に焦っているのか?考え込むほどのことではないのだが、ふとそんなことを思ってしまって。面食らって、溜め息と入り混じるのだ。
「だから言っただろ。僕が職員室に行ってる間に、購買に行けって」
「なに言ってるんだよ。俺たちまだ一年生だぞ?昼休みの購買は戦争なんだからな!そんなところに一人で行けるかよ」
今度は遠慮なく、僕は大きな溜め息を零す。
「橘って、意外にビビリだよな」
「体育会系の先輩が怖いのは、昔も今も変わらないんだよ!」
タンッ!
廊下に鳴り響く、階段を駆け下りた足音。辿り着いた購買は、もう人影もまばらで。橘お目当のカツサンドは売り切れていた。橘が恨めしそうに僕の顔を覗き見る。
「な、なに?」
「『なに』じゃねーよ!呉羽がもたもたしてたからだろー!」
「だから、僕が職員室に行ってる間に「それはさっきも聞いた!」
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