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う…っと、僕は後ろへ身じろぐ。そんな嬉しそうな、期待に溢れるキラキラした瞳で見つめられては「まだ入部するって決めてませんから」なんて、冷たい突き放すような言葉、とてもとても言い難い。
けれど、僕はずっと後になってこの時のことを振り返るのだ。顔色とは素直なもので、言わずとも語っていたのだろう。
(どうしよう)
無言で四月一日先輩と視線をまじあわせる空白の間。そしてふと、気がついたのだ。暖かい四月一日先輩の手が、カタカタと小さく震えていることに。
(………)
「………見学」
「え?」
四月一日先輩が疑問符を浮かべる。
「同好会。見学していってもいいですか?」
か細い声で問いかけると、彼女の…四月一日先輩の大きな瞳が揺らいで見えた。唇をキュッと結んで何度も頷いて、
「もちろん!もちろんだよ!」
やっぱり、四月一日先輩の“嬉しい”が、跳ねる…踊るように、軽やかに。キラキラした瞳の奥には、僕では計り知れない緊張があったのだろう。現状、一人きりで活動している同好会だ。このことも、後になって思い返せば当たり前のことだったのかもしれない。
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