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「いやー。先生は嬉しいよ、五月七日」
「はい?」
「漸く、漸く!完全帰宅部宣言を脱したな!五月七日!」
グッ!と親指を立てて、白い歯を見せる西井先生…刹那、その指を痛い方向に曲げてやりたい衝動にかられる。
「『完全帰宅部宣言』?」
「ち、違います!西井先生“だけが!”勝手に言ってることですから!気にしないでください!」
敢えて大事な箇所を強調したせいで、四月一日先輩相手に声を荒げてしまった。顔が熱くなるのを感じる。そして、適当な西井先生は何気ない面持ちで、一枚の紙切れをポケットから取り出した。
「ほら、五月七日」
そこに書かれている文字は、言わずともおわかり頂けることだろう。“入部届け”__
しかし、そこは四月一日先輩が割ってはいる。
「西井先生、強制はよくありませんよ!『見学』って、五月七日くん言ってるじゃないですか」
「なーに言ってるんだよ。なあ?五月七日」
西井先生は怠そうに自身の首に手を当てて、更には左右に曲げて問いかけてくる。
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