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「運動部に入って、汗水流して青春したいか?」 「え?い、いいえ」 「なら文化部にしぼられるな?」 「まあ…そうですね」 「生物部あるぞ?生き物に興味はあるか?」 「いえ、強いて言うなら無いです」 「楽器は?何かできるのか?吹奏楽部あるぞ?」 「吹奏楽部って、運動部とほぼ変わらないですよね」 「女子たちに男一人混じって、クッキー焼くか?」 「できれば遠慮したいです」 「ちょっ!西井先生!」 西井先生と僕の堂々めぐりの会話に、突然、四月一日先輩が参加する。興奮している様子で、口調が少々、荒々しい。 「運動部で、汗水流して青春。って、どう言うことですか!?文化部だって、立派に青春です!もちろん文芸同好会(ここ)だって!」 「おー。そうだったな、四月一日。すまんすまん」 「謝罪に気持ちがこもっていません!」 棒読みの西井先生に、四月一日先輩がモキー!と、眉間にしわを寄せて反論する。百五十センチあるかないかの四月一日先輩のその姿は、まるで今にも怒ってかぶりつきそうなリスのようで。つまりは可愛らしくて、僕は思わず。本当に思わず、 「…ふっ、はは、ははははは」 声をあげて笑ってしまった。 「どうした、五月七日。ついに頭をやられたか?」 「ははは…失礼なこと言わないでくださいよ。ただ、なんか。なんとなく微笑ましくって」 「微笑ましくないよー!私は真剣だよ!五月七日くん!」 怒れるリスは、僕にまで眉間にしわを寄せて抗議してきた。やはり笑いが溢れて(こぼれて)しまう。 「因みに、文芸同好会は週にどれくらい活動してるんですか?」 笑いすぎて溢れる涙を止める為に、僕は眼鏡の隙間に人差し指をいれた。そして、僕の投げた質問に一転、四月一日先輩は穏やかに返事をくれる。
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