訪問者は突然に。指、きった。

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あれから三日目の昼休み。結局、僕は昨日一昨日と古書室へ足を運ばなかった。理由は至極単純である…“やりたいことが思いつかないから”。 「なぁ呉羽」 「なに?」 僕は、変わらず橘とのんびり、教室で昼ご飯を広げている。 「文芸部どんな感じ?」 「同好会ね。まだ顔だしてないよ」 「お前…行けば、四月一日先輩と二人きりだぞ?」 「そうとは限らないよ」 「なんで?」 「気が向いたら活動、なんだから。必ずしも、四月一日先輩がいる。なんてことはないんじゃない?」 「ふーん…そんなもんなのか」 「そんなものだよ」 その時である。 タッタッタッタッタ__ 「橘が女子を気にかけるなんて珍しいね」 「四月一日先輩は別だろ」 「なんで?」 「あの可愛さは異常」 「ははは、確かに。リスみたいだよな」 「リス?」 タッタッタッタッタ__ 「すみません!呉羽くんいますか!?」 その大きな声に、クラス中の視線が教室の後ろの扉に集まる。クラス内が早くも、あちらこちらで囁きに包まれる一方、当の僕は、ちらりとも予想していなかった、この急過ぎる事態に緑茶が気管を刺激し…つまりはむせていた。
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