訪問者は突然に。指、きった。

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「『突然』、一年生の教室に来たのは四月一日先輩です」 「仕方がないでしょう?学年が違うのだから。お昼休みくらいしか、お話にいけないわ」 「あと、周りの人間に誤解をまねく発言も控えてください。動揺します」 「『誤解』?」 四月一日先輩は小首を傾げる。天然?だとしたら、それは恐ろしいものだ。いつ以来だろう…走った僕は疲弊して、故に諦めて。再び溜め息を吐くと、本題にはいった。 「それで四月一日先輩、用件は?」 「だから!どうして来てくれないの!?」 やはり、色々と抜けている。「文芸同好会なのに」そんな言い方はしたくないが、会話をする上で非常に厄介だ。本人(ぼく)は、察しがついているので、会話が成立しないわけではないのだけれど。さっきのような場所では、困惑と動揺をまねく。 「それは、同好会の話ですか?」 「他になにがあるのよ!」 モキー!と、怒りに任せて尻尾を膨らませて、後ろ足をジタバタしているリスにしかやはり見えない。…わざわざ訊ねなくても、僕たちの共通点なんて文芸同好会(それ)くらいしかないじゃないか。それを、少しでも寂しいと思うのか、当たり前のことと受け止めるのか。 四月一日先輩と知り合って、文芸同好会に入部して、まだ一週間すら経っていないのに。どこから溢れる感情なのか。言葉では表せない小骨が、心につっかかって取れそうにないのだ。そうして、漸く心臓が落ち着いたところで会話をひろげる。
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