訪問者は突然に。指、きった。

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「四月一日先輩、言いましたよね?」 「なにを?」 「活動内容です。『書きたいもの、読みたいもの、気が向いた時に来て、自由に活動すれば大丈夫』って」 「ええ、言ったわ」 「なら文芸同好会の活動に参加するかは、僕の自由ですよね」 「それは~…そう、かもしれないけれど。でも、折角、入部したのだし…それに」 すっかり大人しくなったリスは、膝もとの桃ジュースを見つめて吃る。缶を包んでいる手の親指が不自然に動いて、言葉をつまらせる。僕は、黙って待った。 「…それに、嬉しかったんだもの」 「『嬉しい』?」 「呉羽くんは私の…初めての、後輩だもの」 牛乳室の、白いレースカーテンが揺れる。俯く四月一日先輩の頬は赤らんで、“恥ずかしい”と、そう語っていた。いい加減な気持ちでいた僕を相手に、彼女は、思いを言葉にするという方法で、僕に勇気を教えてくれたのだ。本人は、無意識なのだろうけど。 「………」 「………」 空白の間。流れてくる風が心地いい。僕の髪の毛が、四月一日先輩の制服のリボンが、とても静かに揺れる。初めての二人きりの空間は、雨上がりの匂いがした。
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